
今日こそ研究を進めようと思っていた。
しかし、目の前の業務を一つずつ終えているうちに、気づけば一日が終わっている。急ぎの連絡に対応し、頼まれた仕事を済ませ、ようやく時間ができたころには集中力が残っていない。
研究は大切だと思っている。それでも、今日が締め切りではない仕事は後回しになりやすい。
「時間が空いたら研究する」と考えている限り、その時間はいつまでも来ないのではないか。
研究を特別な日にまとめて進めるのではなく、日常の中に置く方法を考えたい。
研究時間を予定表に先に入れる
診療、会議、授業などは、予定表に時間が入っている。別の仕事を頼まれても、その時間にはすでに予定があると判断できる。
一方で、研究は「今週中に進めたい」と思うだけで、時間までは決めていないことが多い。予定表に存在しない時間には、別の仕事が自然に入ってくる。
そこで、短くても研究時間を予定として先に入れておく。
一日を丸ごと確保できなくてもよい。朝の三十分、昼の一時間、会議前の四十五分など、実際に守れそうな枠を選ぶ。
最初から理想的な研究日を作ろうとせず、週に二回、一回三十分から始める。研究時間を「余ったら使う時間」ではなく、「先に約束しておく時間」として扱いたい。
私が実際に意識しているのは、朝に十分だけでもパソコンを開く時間をつくることだ。
十分では、論文を一気に書き進めることはできない。それでも、前日に書いた文章を読み返す、参考文献を一本確認する、次に直す場所へ印を付けるといった作業はできる。
何より、一度パソコンを開いて研究に触れておくと、次に再開するときの距離が短くなる。「十分しかないから何もできない」ではなく、「十分あるから研究との接点を切らさない」と考えるようにしている。
「論文を書く」を小さな作業に分ける
予定表に「論文を書く」と入れても、作業が大きすぎると始めにくい。
何から手を付けるかを考えているうちに時間が過ぎ、「今日はまとまった時間がないから」と先送りしやすくなる。
そこで、一回の研究時間で終えられる大きさまで作業を分ける。
- 参考文献を三本探す
- 表を一つ確認する
- 方法の段落を二百字書く
- 図の見出しを整える
- 共同研究者への質問を三つにまとめる
三十分で完了できる作業が分かっていれば、研究を始めるまでの迷いが少なくなる。
小さな作業でも、終われば研究は前へ進む。「論文を完成させる」ではなく、「次の三十分で何を終えるか」を決めたい。
作業の最後に「次にすること」を残す
限られた研究時間の多くを、前回の状況を思い出すことに使う場合がある。
どのファイルが最新だったか。どこまで確認したか。次は何をするつもりだったか。それを探しているうちに、集中できる時間が減っていく。
そこで、作業を終える前に、次にすることを一行だけ残しておく。
「次は表2と本文の数値を照合する」「この論文の対象者を確認する」「考察の二段落目に先行研究を追加する」のように、再開後すぐ動ける内容にする。
必要な資料とファイルの保存場所も決めておく。研究を続ける工夫は、集中力を高めることだけではない。再開に必要な手間を減らすことも大切だと思う。
すべての依頼を研究時間より優先しない
研究時間を予定表に入れても、依頼が来るたびに譲っていれば、結局は残らない。
もちろん、緊急の仕事や、自分がすぐ対応すべき業務はある。しかし、届いた依頼のすべてが、研究時間を中断するほど急ぐものなのかは一度考えたい。
今日中でなくてもよい依頼なら、対応する時間を別に決める。自分以外でもできる仕事なら、分担を相談する。新しい仕事を引き受ける前に、すでに決めた研究時間へ影響しないか確認する。
断ることが難しければ、「今すぐ」ではなく期限を相談するだけでもよい。
研究時間を守ることは、ほかの仕事を軽く見ることではない。自分が担っている複数の役割のうち、研究だけが常に後回しにならないようにすることだ。
進まなかった週は、意志より仕組みを見直す
予定していた研究が進まないと、自分の意志が弱いように感じる。
しかし、急な業務が多い時間帯に予定を入れていたのかもしれない。一回の作業が大きすぎたのかもしれない。疲れ切った夜に、最も考える仕事を置いていた可能性もある。
できなかった理由を、自分の性格だけに求めない。
- 研究時間を、比較的中断されにくい時間帯へ移す
- 一回の作業をさらに小さくする
- 週五回ではなく、まず週二回にする
- 書く作業と、資料整理などの軽い作業を時間帯で分ける
続かなかった予定は、現実に合わせて作り直せばよい。守れない理想を掲げるより、繰り返せる小さな予定を持つほうが研究は進みやすい。
今週から試すなら、この三つだけ決める
仕組みを一度に変える必要はない。まずは次の三つを決めてみる。
- 明日の朝、十分だけパソコンを開く時間を予定に入れる
- その十分で終えられる小さな作業を一つ書く
- 作業終了時に、次にすることを一行残す
急な仕事で一回できなくても、計画全体を諦めない。空いている別の枠へ移し、次の一回から再開する。
研究時間を確保する目的は、完璧な予定を守ることではない。研究から離れる期間を短くし、少しずつでも前へ進めることにある。
研究時間を確保することも、研究の一部
研究には、落ち着いて考える時間が必要になる。しかし、その時間が自然に空くことを待っていると、期限の近い仕事に埋もれてしまう。
いつ研究するかを予定に入れる。一回の作業を小さくする。次にすることを残し、再開の手間を減らす。そして、ほかの依頼が来ても、決めた時間を簡単には手放さない。
毎回、予定どおりに進むとは限らない。それでも、研究する時間を自分の予定として扱うことはできる。
研究時間を確保することは、研究の前に済ませる準備ではない。研究を続けるための、大切な作業の一つなのだと思う。
でん

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